【ジョブズの極意】相手を尊重し、相手を導くこと。

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平日夜の粋な勉強会で森大河さんが講演した「神をも巻き込む奇跡のプレゼン。」の講義録をご紹介いたします。

卓越したプレゼンスキルを持っているひとは、スキル云々以前に、信じる力をもっていると森さんは言います。それは、自分を信じる力、相手を信じる力、未来を信じる力だ。信じる力が強いから、相手も信じる、そういうことになります。

 

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スティーブジョブズのスタンフォードのスピーチの考察

では実際にスティーブジョブズのスタンフォードのスピーチで、どのようなことを喋っていたか考察してみます。

 

1「だから退学を決めた。全てのことはうまく行くと信じてね。」

 

2「バラバラの点であっても将来それが何らかのかたちで必ず繋がっていくと信じなくてはならない。自分の根性、運命、人生、カルマ…何でもいい、とにかく信じること。」

 

3「そう信じることで君たちは確信を持って己の心の赴くまま生きていくことができる。」

 

4「信じることで全てのことは、間違いなく変わるんです。」

 

5「私はまだ自分のやった仕事が好きでした。アップルでのイザコザはその気持ちをいささかも変えなかった。フられても、まだ好きなんですね。」

 

6「信念を放り投げちゃいけない。私が挫けずにやってこれたのはただ一つ、自分のやっている仕事が好きだという、その気持ちがあったからです。皆さんも自分がやって好きなことを見つけなきゃいけない。」

 

7「自分が本当に心の底から満足を得たいなら進む道はただ一つ、自分が素晴しいと信じる仕事をやる、それしかない。

 

8「素晴らしい仕事をしたいと思うなら進むべき道はただ一つ、好きなことを仕事にすることなんですね。」

 

9「心の問題と一緒でそういうのは見つかるとすぐピンとくるものだし、素晴らしい恋愛と同じで年を重ねるごとにどんどんどんどん良くなっていく。」

 

10「君たちはもう素っ裸なんです。自分の心の赴くまま生きてならない理由など、何一つない。」

 

11「君たちの時間は限られている。だから他の誰かの人生を生きて無駄にする暇なんかない。」

 

12「その他大勢の意見の雑音に自分の内なる声、心、直感を掻き消されないことです。」

 

13「どうしたわけか君が本当になりたいことが何か、もうとっくの昔に知っているんだ。だからそれ以外のことは全て、二の次でいい。」

 

このように13分あまりのスピーチの間に、同じようなことを表現を変えて、1分に1度は、信じる態度を示しています。

 

心をつかむスピーチの裏には卓越な比喩表現がつかわれている

あなたが、感動するスピーチに出くわした時、なかなか自分では考えつかない言い回しに意識すれば、自分自身もそういう表現ができるようになるでしょう。

 

1「ウィンドウズはマックの単なるパクりに過ぎないので、パソコン全体で見回してもそうした機能を備えたパソコンは地上に1台として存在しなかったことになります。」

 

2「もし私がドロップアウト(退学)していなかったら、あのカリグラフィのクラスにはドロップイン(寄り道)していなかった。」

 

3「自分のせいで前の世代から受け継いだ起業家たちの業績が地に落ちた、自分は自分に渡されたバトンを落としてしまったんだ、そう感じました。」

 

4「成功者であることの重み、それがビギナーであることの軽さに代わった。」

 

5「そりゃひどい味の薬でしたよ。でも患者にはそれが必要なんだろうね。人生には時としてレンガで頭をぶん殴られるようなひどいことも起こるものなのです。」

 

6「何故と言うなら、死はおそらく生が生んだ唯一無比の、最高の発明品だからです。」

 

7「それはまるでグーグルが出る35年前の時代に遡って出されたグーグルのペーパーバック版とも言うべきもので、理想に輝き、使えるツールと偉大な概念がそれこそページの端から溢れ返っている、そんな印刷物でした。」

 

「バトンを落としてしまった。」という表現を選ぶジョブズ。
彼自身こそが自分ひとりで成し遂げたんじゃないということをわかっており、それを、比喩でこっそり表現しています。
言葉の選び方がすでに、自分を信じ、相手を信じ、未来につないでいるのです。

 

ジョブズのプレゼンと合気道にある意外な共通点とは?

 

さて、鑑賞したあとは、さらに科学的アプローチをしてみます。
ジョブズのプレゼンと合気道には共通点があると森さんは指摘します。

 

それは、

 

1.相手を尊重する
2.相手を導く

 

の繰り返しであるということ。全ては基本に忠実なのです。

 

格闘技の神様と呼ばれた男、合気道の塩田剛三は、この世で一番強い技は何ですかという質問にこう答えました。
「自分を殺しに来た相手と友達になることさ」と。

 

プレゼンは、「目的の行動を相手にさせる手段」でありますが、自分にとって都合のいいものではありません。相手にとってよいもの、つまり贈り物であることです。
そのときに有効なのが、ストーリーをつかって、感情をゆさぶり、人を動かすということ。
自分の身の上話が勝手に自分におきかえて解釈されてしまうのです。

 

ヒット映画でも活用される黄金の鉄則「ヒーローズジャーニー」

 

ヒーローズジャーニーと呼ばれるヒット映画でも活用される黄金の鉄則があります。

 

それは、

 

1.旅だち
2.困難
3.帰還

 

の3つで構成されたストーリーであること。

 

スタンフォードの演説では、

 

1.点をつなげる
2.愛と喪失
3.死

 

に対応させています。

 

また、今回の演説で面白いのは、「点をつなげる」というお話が、そのチャプターで終わっておらず、最後に、点でつながっているというところです。何につながっているのかといえば、それはとりもなおさず、「Stay hungry」のところ。

 

ジョブズは、空き瓶を拾って、寺院の施しで空腹を満たすために、毎日何マイルも歩いた貧乏学生の話をしてます。
それは、最後のこのフレーズにつなぐための布石なのです。

 

なぜ、こんなに芸の細かいことを彼はするのか?
では脳科学的なアプローチをしてみます。

ゲシュタルト効果を生み出すネストループとは?

 

人間の脳は空白をうめたがるということを、ゲシュタルト効果と呼びます。一部分がかけたら、脳で全体像を勝手に創造してしまうのです。

 

これをうまくプレゼンにつかわれるのが、ネストループです。

 

Aの序論があり、Aの結論に行く前に、
Bの序論をはじめ、Bの結論に行く前に、
Cのお話をして、Bの結論、Aの結論にいくという、
後回しの論理構造を持たせると、聴講者は意識が活性化して、最後まで聴こうとするのです。

 

まるでサスペンスドラマが最後まで視聴者を引込み、最後にそういうことだったのかと合点があう、あの感じです。
スタンフォードの演説では、最後のあのフレーズで落とすために、ネストの帰結部分がずっと放置されていたのです。

 

また、ジョブズは「質問」という形で、「空白をうめる」という特性をうまく使っている利用しています。

 

1.なんで大学をやめたかって?
2.なんで自分で作った会社からクビにされるの?
3.もし人生最後の日だとしたら、今日やることは本当にやりたいだろうか?

 

疑問形で投げかけることにより聴衆は無意識に答えを求めようとします。それも、投げかけた本人のスピーチから。

「くりかえし」と「インパクト」で脳は学習する

さらに、ジョブズは「くりかえし」と「インパクト」をうまく使います。なぜなら、脳が学習するのはこの2つのでしかないことを知っているからです。

 

最初にもあげました13個の文章は、「内なる声をきけ」ということのくりかえしです。
最後の帰結文である、「Stay hungry, Stay foolish」はご丁寧に3回も言っています。

 

インパクトは言うまでもありません。
例にあげた7つの比喩表現も卓越していることながら、ここではハロー効果があります。
それは、「特定の評価に他の評価の影響をうける」という現象です。
芸能人がすすめるから、つい買っちゃいたくなるのもこの現象です。

 

ハロー効果をあなたが得たいのであれば、あなたの生き様をきっちり伝えるか、自分以外の誰かを例にとって、信用される場面を作り上げるかです。
ジョブズはこのスピーチを成立させるために、いままの功績もまた念頭に入れて組み込んでいます。
どん底の話が深くなったところで、ピクサー成功話をちょろっと出した途端に、聴衆の拍手が起こるというのはこういうことです。

 

脳は無意識にマルチタスクで、情報をインプットし続ける

 

最後の科学的アプローチは、サブリミナル効果です。
あなたの脳は1つのことにフォーカスしてしまいますが、実は、無意識にマルチタスクで、情報をインプットし続けています。
後から読めば、こことあそこがつながっているよなと気づくような細かい伏線を張っているのは、その人がその場でわかることを意図しているのではなく、脳の無意識にすりこんでいるのです。

 

Stay hungryのくだりは、ジョブズの学生時代のお話です。
なぜ、学生時代に戻すのでしょうか?

 

スピーチの最初に言ったことを思い出すと、「ありがとう」のあとに、世界有数の名門大学の卒業式にいることが光栄だと言っております。

 

「俺は大学なんかドロップアウトして来たんだよ。いい大学を出てるからっていい気になるなよ。もっとバカになれよ。」
とは、言いませんでした。

 

ここでこんな話をしたらどうでしょう?

 

「俺はペプシから社長を呼んだときに、このまま砂糖水を売り続けるのかって言ったよ」
「IBMの奴がさあ、長い契約書送ってきたからゴミ箱に捨てちゃったよ」
「ジョージルーカスの希望の3分1に買いたたくのなんて朝飯前だったよ。」
「俺はディズニーの契約期間が残っているのに破棄したんだよ。」
「ハリウッドにくらべちゃあ音楽レーベルはちょろかったなあ。」
「俺がケータイからボタンを全部ぬいたら、日本の奴らも真似しちゃってさ。」

 

フーリッシュになれというならば、実際にジョブズが行ったフーリッシュの数々を持ち出したいところです。
しかし、そんな話は一切しませんでした。
なぜなら、スタンフォードの学生への敬意があるからです。
本音が理解されることを信じて、あえて場に合わない言動をしなかったのです。

 

最後は数十年前の学生に戻り、先輩として後輩に言葉をささげています。
そのくだりを読んでこの論文も終わりにしたいと思います。

 

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写真の下にはこんな言葉が書かれていました。
「Stay hungry, stay foolish.」

 

それが断筆する彼らが最後に残した、お別れのメッセージでした。
「Stay hungry, stay foolish.」

 

 それからというもの私は常に自分自身そうありたいと願い続けてきた。
そして今、卒業して新たな人生に踏み出す君たちに、それを願って止みません。

 

「Stay hungry, stay foolish.」

 

ご清聴ありがとうございました。

 

 

FinとTechのキャリアを兼ね備えた森大河

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